実務用ワークシート

会社や顧客の情報、AIに入れていいのか:一人事業者のための線引きリスト

このファイル1つで完結します。

上から順に読み、プロンプト票はコピーボタンで貼って使ってください

「便利なのは分かるけど、情報漏洩が怖い。」


01「怖いから入れない」が、一番高くつく

AIを仕事で使う話になると、必ずこの声が出ます。
「会社の情報を入れていいかわからない。」
「顧客の名前が入った文章は、貼っちゃダメな気がする。」
「何がダメなのか分からないから、全部やめている。」

私は、この感覚を笑う気になれません。
私は顧客の家に上がる仕事を10年やってきた一人事業主です。
顧客の住所も、家の中の事情も、日常的に預かってきました。
この商売で信頼を一度失えば、次はありません。
だから「怖い」は、正しい感覚だと思っています。

01.01怖さの正体は「線がない」こと

ただ、10年やってきた立場から言うと、怖さの正体は情報そのものではありません。
線がないことです。

どこまでが入れていい情報で、どこからがダメなのか。
自分の中に線がないと、全部が「なんとなく危ない」に見えます。
そして人は、なんとなく危ないものを全部避けます。

その結果、何が起きるか。
見積もりの下書きも、顧客への説明文も、作業手順の整理も、全部自分の手作業のまま残ります。
AIに月額を払っている人でも、仕事の中身は何も渡せていない。
無料で試している人は、当たり障りのない質問だけして「こんなものか」と閉じる。

怖くて何も入れない状態は、安全なのではありません。
AIの恩恵を、自分でゼロにしているだけです。

01.02線引きは「守るため」ではなく「使うため」

だから、この教材の立場を先に言います。

線引きは、守るために引くのではありません。
使うために引きます。

線が引けている人は、入れていい情報を堂々と入れられます。
置き換えれば入れられる情報を、置き換えて入れられます。
入れてはいけない情報だけを、確実に外せます。

つまり、正しく線を引くと、AIに渡せる仕事はむしろ増えます。

やることは3つだけです。
自分が扱う情報を3つに分ける。
使っているAIの設定を確認する。
顧客に聞かれたら答えられる説明を持つ。

この3つを、読みながら作っていきます。
自分で分類する必要はありません。
分類はAIにやらせます。

▼ここで手を動かす

まず、現状の確認だけします。
次の中から、「AIに入れるのを避けている情報」に当てはまるものを選んでください。
頭の中で印を付けるだけで大丈夫です。

・顧客や取引先の名前が入った文章
・見積もり、請求書、金額の入った書類
・自分の売上や経費の数字
・仕事のやり取りのメール、LINEの文面
・作業手順や社内のノウハウ
・住所、電話番号などの連絡先
・契約書、規約などの書類

なぜ確認するか。
避けているものが多い人ほど、この線引きで返ってくる作業量が大きいからです。
ここで選んだものが、この後の3区分に入っていきます。

02情報は3つにしか分かれない

線引きと聞くと、難しい規程集を想像するかもしれません。
実際は、仕事で扱う情報は3つにしか分かれません。

一つ目。
そのまま入れていい情報。

二つ目。
置き換えれば入れていい情報。

三つ目。
何があっても入れない情報。

この3区分が、この教材の背骨です。

情報は3つにしか分かれない

そのまま入れていい
・自分の考え、書きかけの文章
・段取りの相談
・公開済みの情報(サービス内容、料金表)
・一般的な業界知識
置き換えれば入れていい
・顧客とのやり取りの文面
・見積もりの内容
・案件の状況整理

固有名詞と数字を役に変えれば、中身は相談できる
何があっても入れない
・パスワード、認証情報
・マイナンバー、口座、カード番号
・他人の医療、健康の情報
・守秘義務契約の内部情報

判断基準は2つだけ。「誰かを特定できるか」「認証・番号・守秘義務に関わるか」。

図1 情報の3区分マップ

02.01そのまま入れていい情報

自分の頭の中にある考えは、そのまま入れて大丈夫です。
書きかけの文章、アイデア、悩み、段取りの相談。
誰の情報でもない、自分の思考はAIに一番渡しやすい領域です。

すでに世の中に公開されている情報も、そのままで大丈夫です。
自分のホームページに書いてあるサービス内容。
公開している料金表。
一般的な業界知識。

ここで大事な考え方が一つあります。
「誰かに見られて困るか」ではなく「誰かを特定できるか」で見ることです。

02.02置き換えれば入れていい情報

仕事の実務のほとんどは、ここに入ります。

顧客とのやり取りの文面。
見積もりの内容。
案件の状況整理。

これらは、固有名詞と特定できる数字を置き換えれば、中身をAIに渡せます。
「田中様」を「Aさん」にする。
「大阪市北区の3LDK」を「B市の3LDK」にする。
それだけで、文章の構造も、悩みの中身も、そのまま相談できます。

多くの人は、この区分の存在を知らないまま「顧客の名前が入っているから全部ダメ」と判断しています。
実際にダメなのは名前であって、相談したい中身ではありません。

02.03何があっても入れない情報

最後の箱は、少数で明確です。

パスワード、APIキーなどの認証情報。
マイナンバー、口座番号、クレジットカード番号。
他人の医療、健康に関わる情報。
守秘義務契約で縛られている取引先の内部情報。

これは「置き換えればいい」が通用しない領域です。
置き換えても、入れる意味がそもそもない情報でもあります。

▼ここで手を動かす

ここでは、自分で分類しなくて大丈夫です。
最初のワークで選んだ「避けている情報」と、普段扱っている情報を、下のプロンプトの末尾に貼ってAIに送ってください。

PROMPT
私が仕事で扱う情報を、AIに入れる観点で3つに分類してください。
分類はあなたが行ってください。
区分は「そのまま入れてよい」「固有名詞や数字を置き換えれば入れてよい」「何があっても入れない」の3つです。
判断に迷うものは「迷う」として分け、何が確認できれば判断できるかを添えてください。
基準は「誰かを特定できるか」「認証・番号・守秘義務に関わるか」です。
ここから私の情報です。
仕事の内容:
普段扱っている情報:
AIに入れるのを避けている情報:

なぜ効くか。
自分で分類すると「なんとなく怖い」が混ざって、全部が真ん中の箱に寄ります。
基準を2つ(特定できるか・認証や守秘義務か)に絞ってAIに分けさせると、感覚ではなく構造で箱が決まります。
「迷う」を許しているのは、迷いを無理に潰すと分類自体が信用できなくなるからです。

03置き換えの実務:名前を消すのではなく、役に変える

3区分の真ん中、「置き換えれば入れていい情報」を実際に使えるようにします。
ここが使えるようになると、AIに渡せる仕事が一気に増えます。

03.01消すと相談にならない、だから役に変える

置き換えでよくある失敗は、消しすぎです。

名前を消す。
金額を消す。
場所を消す。
そうやって黒塗りだらけにした文章は、安全ですが、相談としては壊れています。
AIは文脈が分からないので、当たり障りのない答えしか返せません。

コツは、消すのではなく役に変えることです。

「田中様」は「常連のAさん」。
「株式会社山田工務店」は「取引先のB社(建築業)」。
「5万円の見積もり」は「数万円台の見積もり」。

誰かは特定できないが、関係と状況は残っている。
この状態なら、AIは中身に踏み込んだ答えを返せます。

03.02組み合わせの特定に注意する

一つだけ、置き換えで見落としやすい点があります。
単体では安全でも、組み合わせると特定できることがあります。

「C市で美容室を一人でやっている」だけなら平気でも、
「C市の商店街で、駅前に今月オープンした美容室」まで書くと、ほぼ特定できます。

判断の目安は一つです。
その文章を、本人が読んだら自分のことだと分かるか。
分かるなら、もう一段ぼかします。
市名を県名に。
業種をもう一段広く。
時期を「最近」に。

置き換えの早見:消すのではなく、役に変える

元の書き方置き換えた書き方
田中様常連のAさん
株式会社山田工務店取引先のB社(建築業)
5万円の見積もり数万円台の見積もり
大阪市北区の3LDKB市の3LDK

目安:その文章を本人が読んで自分のことだと分かるなら、もう一段ぼかす(市名→県名、業種→広く、時期→「最近」)。相談の中身(状況・困りごと)は削らない。

図2 置き換えの早見

▼ここで手を動かす

置き換えは、自分でやらなくて大丈夫です。
AIに相談したい実際の文章を、下のプロンプトと一緒に送ってください。

PROMPT
次の文章を、AIに安心して相談できる形に置き換えてください。
ルールは3つです。
人名・社名・地名・特定できる数字は、役割に置き換える(例:常連のAさん、取引先のB社、数万円台)。
組み合わせて個人や会社が特定できる記述は、一段ぼかす。
相談の中身(状況、困りごと、判断したいこと)は削らない。
置き換えた後の文章と、置き換えた箇所の一覧を出してください。
ここから文章です。

なぜ効くか。
「相談の中身は削らない」を先に約束させているからです。
このルールがないと、AIは安全側に倒して情報を削りすぎます。
置き換え箇所の一覧を出させるのは、あなたが最終チェックできるようにするためです。
置き換えの実行はAI、最後に見るのは人間。
この分担が一番安全で、一番速いです。

03.03置き換え用の下準備を一度だけ作る

毎回置き換えるのが面倒なら、自分用の置き換え表を一度作っておく手があります。
よく出る顧客はAさん、Bさん。
よく出る取引先はB社、C社。
自分の商圏はD市。

一度決めておくと、AIとのやり取りの中で呼び名が安定します。
先週の相談の続きを、今週も同じ呼び名で話せます。

▼ここで手を動かす

これもAIに作らせます。

PROMPT
私の仕事でよく登場する相手を、AI相談用の置き換え表にしてください。
実名は書かないので、種類と数だけ伝えます。
出力は「役割名(例:常連のAさん)/元の種類(例:個人顧客)/説明の一言」の一覧にしてください。
よく登場する相手の種類と数:

なぜ効くか。
置き換え表があると、置き換えが「毎回の作業」から「一度の設定」に変わります。
実名を一度もAIに渡さずに表が作れる点も、この順番の利点です。

04設定で守る:入力が学習に使われるかを確認する

情報の線引きができたら、次はAI側の設定です。

04.01何を確認するのか

確認することは、実は一つだけです。
自分が入力した内容が、AIの学習(モデルの改善)に使われる設定になっているかどうか。

ここで大事な前提を言います。
この設定の名前や場所は、サービスごとに違い、しかもよく変わります。
だから、この教材では「この画面のここを押す」という手順を断定しません。
2026年7月時点の画面手順を書いても、あなたが読む頃には変わっている可能性があるからです。

代わりに、どのサービスでも通用する探し方を渡します。

04.02探し方は3ステップで共通

一つ目。
設定の中から「プライバシー」「データ」「データコントロール」という種類の区分を探す。

二つ目。
その中から「入力内容をモデルの改善・学習に使う」という種類の項目を探す。

三つ目。
その項目をオフにできるか、自分のプラン(無料か有料か)ではどう扱われるかを確認する。

一般論として、無料プランと有料プラン、個人向けと事業者向けで、データの扱いが違うことがあります。
「無料で使えているからいい」ではなく、自分のプランの扱いを一度は見てください。

学習利用の設定:どのAIでも通用する探し方

ステップ1設定の中から「プライバシー」「データ」「データコントロール」という種類の区分を探す
ステップ2「入力内容をモデルの改善・学習に使う」という種類の項目を探す
ステップ3オフにできるか、自分のプラン(無料か有料か)での扱いを確認する
  • 確認した日付を線引きメモに書いた
  • 使っているAIすべてで確認した
  • 最終確認は自分の画面と公式ページで行った

設定は線引きの代わりではありません。「入れない箱」は設定がどうであれ入れない。線引きが主、設定が従。

図3 設定確認チェックリスト

▼ここで手を動かす

設定画面を探すのが面倒なら、これもAIに聞けます。
使っているAIに、そのまま貼ってください。

PROMPT
あなたのサービスで、私が入力した内容が学習やモデル改善に使われるかを確認したいです。
確認できる設定画面の場所と、項目の名前を教えてください。
無料プランと有料プランで扱いが違う場合は、その違いも教えてください。
最新の情報が分からない場合は、分からないと言った上で、公式のどこを見ればよいかを教えてください。

なぜ効くか。
注意点があります。
AIは、自分自身の最新の設定画面を正しく知らないことがあります。
学習した時点の古い画面を、自信満々に答えることがあるからです。
だから、このプロンプトの目的は「探す場所の見当を付けること」と「公式のどこを見ればいいかを出させること」です。
最後の一文で「分からないなら分からないと言え」を先に許可しておくと、古い情報を断定される事故が減ります。
最終確認は、必ず自分の画面と公式ページで行ってください。

04.03設定を過信しない

一つだけ釘を刺しておきます。
学習利用をオフにしても、「何を入れてもいい」にはなりません。

設定は、線引きの代わりではありません。
3区分の「何があっても入れない」箱は、設定がどうであれ入れない。
設定は、真ん中の箱(置き換えれば入れる)を安心して使うための土台です。

線引きが主で、設定が従。
この順番だけ覚えておいてください。

05顧客に説明できる形にする

線引きと設定ができたら、最後の部品です。
顧客や取引先に「AIを使っているんですか」と聞かれたとき、答えられる説明を持ちます。

05.01説明文は、守りの道具ではなく信頼の道具

この説明文を「聞かれたときの言い訳」だと思うと、価値を半分捨てることになります。

私の商売で言えば、顧客は家の中を見せる相手を選んでいます。
その相手が、預けた情報をどう扱うか。
聞かれる前に答えを持っている人と、聞かれて口ごもる人。
どちらに次も頼みたいかは、比べるまでもありません。

説明文の中身は、この教材でここまでに作ったものそのままです。

何をAIに入れていないか(名前、連絡先、番号系は入れない)。
入れるときにどうしているか(誰か分からない形に置き換える)。
道具側で何をしているか(入力を学習に使わない設定を確認している)。

つまり、線引きを作った人だけが、この説明文を本当のこととして言えます。
やっていないことを書く説明文は、それ自体が一番危ない情報の扱いです。

05.02長い規程はいらない

一人事業者に、何ページもあるプライバシーポリシーは要りません。
聞かれたときに口頭で言える3〜4文。
必要なら見積書やホームページの隅に載せられる短い一段落。
それで十分です。

▼ここで手を動かす

説明文も、AIに下書きさせます。
ここまでのワークでAIに作らせた「3区分の結果」と「設定確認の結果」を、そのまま使います。

PROMPT
私の仕事向けに、顧客へAI利用を説明する短い文章を作ってください。
条件は4つです。
口頭で言える3〜4文の版と、書面に載せる一段落の版の2つを作る。
「入れていないもの」「置き換えていること」「設定を確認していること」の3点だけで構成する。
実際にやっていないことは書かない。
大げさな安全宣言(絶対に安全です、など)はしない。
ここから私の状況です。
仕事の内容:
3区分の結果:
設定確認の結果:

なぜ効くか。
「やっていないことは書かない」「絶対安全と言わない」を条件にしているからです。
説明文の信頼は、盛らないことで生まれます。
できていることだけを短く言う文章は、それだけで同業と差が付きます。

06線引きリストを1枚にまとめる

部品が揃いました。
3区分。
置き換え表。
設定の確認結果。
顧客への説明文。

最後に、これを1枚にまとめて、いつでも見られる場所に置きます。

06.011枚になっていないと、線引きは消える

線引きは、頭の中に置いておくと薄れます。
新しい仕事が来たとき、急いでいるとき、深夜に作業しているとき。
迷った瞬間に見る場所が決まっていないと、結局「なんとなく」に戻ります。

1枚のメモになっていれば、迷ったらそこに戻るだけです。

線引きの全体図:怖さを線に変える順番

1.3区分扱う情報を貼って、AIに3つの箱へ分けさせる
2.置き換え表よく出る相手を役割名に。実名はAIに渡さず作れる
3.設定の確認学習利用の項目を確認して、日付を書く
4.顧客への説明文やっていることだけを短く。AIに下書きさせる
5.1枚の線引きメモ全部を統合。迷ったらここに戻る

新しいAIを使う前の3問:どの箱を入れる?/学習利用は確認した?/説明文のままで答えられる?

図4 線引きの全体図

▼ここで手を動かす

まとめ作業も、AIにやらせます。
ここまでのワークの結果を貼ってください。

PROMPT
ここまでに作った内容を、1枚の「AI利用の線引きメモ」にまとめてください。
構成は次の順にしてください。
1.何があっても入れないもの
2.置き換えれば入れていいもの(置き換え表つき)
3.そのまま入れていいもの
4.使っているAIと設定の確認結果(確認した日付を入れる)
5.顧客に聞かれたときの説明文
迷ったときに戻る場所として使うので、短く、見て分かる形にしてください。
ここから材料です。

なぜ効くか。
順番を「入れないもの」から始めているのがポイントです。
一番事故になる箱を先頭に置くと、急いでいるときほど最初に目に入ります。
確認した日付を入れさせるのは、設定やサービスの仕様が変わるからです。
日付が古くなったら、確認だけやり直す。
それがこのメモの運用です。

07新しいAIを使う前の3つの質問

線引きメモができた後の話を、少しだけします。

これから先も、新しいAIサービスは出続けます。
そのたびに線引きをやり直すのは現実的ではありません。
だから、新しい道具を使う前の質問を3つだけ固定します。

一つ目。
これに入れるのは、3区分のどの箱の情報か。

二つ目。
入力が学習に使われるかを、設定か公式ページで確認したか。

三つ目。
これを使っていると顧客に聞かれたら、今の説明文のままで答えられるか。

3つとも通れば、使い始めていいです。
一つでも詰まったら、詰まった所だけ埋めれば済みます。

▼ここで手を動かす

この3問も、線引きメモの最後に貼り付けておきます。
先ほどの1枚メモの末尾に、次の行を足すだけです。

・新しいAIを使う前:どの箱を入れる?/学習利用は確認した?/説明文のままで答えられる?

なぜ効くか。
線引きが崩れるのは、たいてい「新しい道具を急いで使い始めた日」です。
使う前の質問が3つに固定されていると、急いでいる日でも線が守られます。

08場面別にやってみる:よくある4つの仕事

線引きの考え方は揃いました。
ただ、考え方だけだと、明日の仕事で手が止まります。
だから、一人事業でよくある4つの場面で、線引きがどう動くかを最初から最後まで見せます。

08.01場面1:顧客への返信メールを整えたい

顧客から少し込み入った要望のメールが来た。
返事の文面をAIに相談したい。

まず3区分で見ます。
メール本文には、顧客の名前、案件の詳細、金額が入っています。
これは真ん中の箱、置き換えれば入れていい情報です。

やることは2つ。
名前を「常連のAさん」に変える。
案件の詳細で特定につながる部分(住所、日付、金額)を「B市の案件」「数万円台」にぼかす。

そのうえで、置き換えプロンプトに通してからAIに相談します。
返ってきた返信案の置き換え部分を実名に戻すのは、送信前のあなたの仕事です。

この場面の事故は、たいてい「急いでいたから原文のまま貼った」で起きます。
急いでいる日ほど、置き換え表の出番です。

08.02場面2:見積もりの相談をしたい

新規案件の見積もりをどう組むか、AIと壁打ちしたい。

見積もりの構造(作業項目、時間、単価の考え方)は、実はほとんど自分の思考です。
一番上の箱、そのまま入れていい情報が中心になります。

入れてはいけないのは、相手の社名と、守秘義務がある案件の内部情報だけ。
「建築業のB社から、C県の物件でこういう作業依頼が来ている」まで置き換えれば、単価の考え方も、値引きの判断も、全部相談できます。

見積もり相談を避けている人は多いですが、避ける理由のほとんどは置き換えで消えます。

08.03場面3:契約書や規約を読んでもらいたい

取引先から届いた契約書を、AIに要約させたい。
ここは一段慎重にします。

まず確認するのは、その契約書自体に秘密保持の条項があるかどうかです。
相手との契約で「内容を第三者に開示しない」となっている書類は、一番下の箱に入ります。
AIサービスも第三者です。
この場合は、書類そのものを貼るのはやめます。

代わりにできることはあります。
「この種類の契約でよくある注意点は何か」という一般論の質問なら、書類を貼らずに聞けます。
条項の意味が分からないときは、その条項の型だけを抜き出して、社名や数字を全部伏せて聞く方法もあります。

貼れないものがあるのは不便ではなく、線が機能している証拠です。

08.04場面4:売上や経費をAIに整理させたい

月々の売上をまとめて、傾向をAIに分析させたい。

自分の売上の数字は、自分の情報です。
誰かを特定できる情報ではないので、基本は入れられます。

注意が要るのは、明細の形です。
「どの顧客からいくら」という一覧は、顧客名が入った瞬間に真ん中の箱になります。
顧客名をA、B、Cに置き換えた明細なら、傾向分析はそのままできます。

もう一つは、学習利用の設定です。
自分の事業数字を継続的に入れていくなら、設定の確認を先に済ませておく。
順番はここでも、線引きが主、設定が従です。

▼ここで手を動かす

自分の仕事の場面で確かめます。
今週やる予定の仕事を、下のプロンプトで判定させてください。

PROMPT
今週AIに手伝わせたい仕事があります。
この仕事で扱う情報を3区分(そのまま入れてよい/置き換えれば入れてよい/何があっても入れない)で判定し、置き換えが必要な部分は置き換え例も出してください。
秘密保持や守秘義務に関わる可能性がある場合は、貼らずに済む代わりの聞き方を提案してください。
ここから仕事の内容です。
やりたいこと:
扱う情報:

なぜ効くか。
一般論の線引きは、自分の仕事に当てた瞬間が一番ずれやすいからです。
実際の予定で一度判定を通すと、3区分が「知識」から「手癖」に変わります。
代わりの聞き方まで出させるのは、「貼れない=AIを使えない」で止まらないためです。

09よくある勘違いを4つだけ潰す

線引きの周りには、よく聞く勘違いがいくつかあります。
放っておくと線が歪むものだけ、4つ潰しておきます。

09.01勘違い1:「有料プランなら何を入れても安全」

有料かどうかと、何を入れていいかは、別の話です。
有料プランの方がデータの扱いの選択肢が多い傾向はあります。
それでも、認証情報や番号系を入れていい理由にはなりません。
料金は線引きの代わりになりません。

09.02勘違い2:「学習利用をオフにしたから大丈夫」

設定の章で書いたとおり、設定は真ん中の箱を安心して使うための土台です。
オフにしても、入れない箱は入れない箱のままです。
それに、設定は変わることがあります。
だから線引きメモに「確認した日付」を入れています。

09.03勘違い3:「AIは入力を全部覚えていて、他の人に話す」

これは逆方向の勘違いで、怖さを増やしすぎるものです。
会話の内容が、そのまま他のユーザーへの回答に出てくるという単純な仕組みではありません。
ただし、どう扱われるかはサービスと設定次第です。
だから「覚えているか」を想像で議論するより、学習利用の設定を確認する方が先です。
分からないものは、分からないまま怖がるのではなく、確認できる形に変えます。

09.04勘違い4:「線引きは一度作れば終わり」

線引きの考え方(3区分)は変わりません。
でも、使うサービス、プラン、仕事の内容は変わります。
だから、新しいAIを使う前の3つの質問と、確認日付の更新だけは続きます。
続けると言っても、数か月に一度、メモを見直すだけです。

▼ここで手を動かす

この4つの勘違いのうち、自分がしていたものがあるかだけ確認してください。
あった場合は、線引きメモの余白に一行で書いておきます。

・自分がしていた勘違い:

なぜ効くか。
勘違いは、指摘された直後は消えても、忙しくなると戻ってくるからです。
自分の字(自分のメモ)で書いた一行は、他人の注意書きより長持ちします。

10うまくいかない時の見直し

ここまでのワークが、うまく回らないこともあります。
よくある詰まり方と、見直す場所を置いておきます。

10.013区分の結果が「迷う」だらけになる

AIに分類させたのに、半分以上が「迷う」に入った。
これは失敗ではなく、貼った情報が粗い合図です。

「顧客とのやり取り」とまとめて貼るのではなく、「返信メールの下書き」「見積もりの金額相談」「クレーム対応の相談」まで割ってもう一度貼ってください。
情報は、細かく割るほど箱が決まります。

10.02置き換えたら文章が意味不明になった

置き換えが強すぎるサインです。
プロンプトの「相談の中身は削らない」が効いていない場合は、置き換え後の文章を読み直して、「これを他人が読んで状況が分かるか」で確認してください。
分からないなら、役割の情報(常連か新規か、業種、規模感)を足します。
特定に近づくのは固有名詞と数字で、役割の情報ではありません。

10.03説明文が大げさになった

AIが作った顧客向け説明文が、宣言文のように膨らむことがあります。
「万全のセキュリティ」「完全に保護」のような言葉が入っていたら、削ってください。
やっていることを、やっている分だけ書く。
盛った説明文は、一度の質問で崩れます。

11線が引けたら、次は置き場所と払い方

ここまでで、あなたの手元には4つ残っているはずです。

自分の情報の3区分。
置き換え表。
設定の確認結果と日付。
顧客への説明文が入った、1枚の線引きメモ。

これで「怖いから全部入れない」は終わりです。
入れていいものを、堂々と入れられます。

そうなると、次の疑問はこうなるはずです。
「じゃあ、自分の仕事のどこでAIを使えばいいのか。」
それは、仕事の書き出しから始める話なので、置き場所の教材で扱っています。

さらにその先で「どのAIに払うか」を決めるときは、課金判断の教材があります。
順番としては、線引き、置き場所、払い方。
守りから入って、配置を決めて、最後にお金です。

12読んでいるあなたへ

最後に、今日やることだけ置いておきます。

一つ目。
避けている情報のチェックリストに印を付ける。

二つ目。
扱っている情報を貼って、AIに3区分させる。

三つ目。
使っているAIの設定で、学習利用の項目を確認する。

四つ目。
顧客への説明文を、AIに下書きさせる。

五つ目。
全部を1枚の線引きメモにまとめて、見える場所に置く。

ここまでやれば、「情報漏洩が怖いから使えない」は、もうあなたの理由ではなくなります。
怖さは消すものではなく、線に変えるものです。
線に変わった怖さは、あなたの商売では信頼という名前になります。

13購入特典

この教材には、本文のワークをすぐ実行できる特典を付けています。

一つ目は、線引きメモのひな形です。
本文の順番どおりに空欄を埋めれば完成する形にしてあります。

二つ目は、本文で使った置き換えプロンプトと説明文プロンプトの一覧です。
コピーしてそのまま使えます。

付録A

14AI利用の線引きメモ(ひな形)

本文の順番どおりに空欄を埋めれば完成します。
迷ったときに戻る場所として、いつでも見られる所に置いてください。
順番が「入れないもの」から始まっているのは、一番事故になる箱を先頭に置くためです。


1.何があっても入れないもの

・パスワード、APIキーなどの認証情報
・マイナンバー、口座番号、クレジットカード番号
・他人の医療、健康に関わる情報
・守秘義務契約で縛られている取引先の内部情報
・(自分の仕事で追加するもの):

2.置き換えれば入れていいもの(本文の3区分ワークの結果を貼る)



私の置き換え表(本文の置き換え表ワークの結果を貼る)

役割名:    元の種類:
役割名:    元の種類:
役割名:    元の種類:

3.そのまま入れていいもの

・自分の考え、書きかけの文章、段取りの相談
・公開済みの情報(自分のサービス内容、料金表)
・(自分の仕事で追加するもの):

4.使っているAIと設定の確認結果

AIの名前:   プラン:   学習利用の設定:   確認した日付:
AIの名前:   プラン:   学習利用の設定:   確認した日付:

5.顧客に聞かれたときの説明文(本文の説明文ワークの結果を貼る)

口頭で言う版:

書面に載せる版:


新しいAIを使う前の3つの質問

・これに入れるのは、どの箱の情報か?
・入力が学習に使われるかを、設定か公式ページで確認したか?
・これを使っていると顧客に聞かれたら、今の説明文のままで答えられるか?

自分がしていた勘違い(本文の勘違い章で気づいたものを一行)

付録B

15置き換え・説明文プロンプト一覧

本文で使ったプロンプトを、章の順番のまま集めてあります。
使い方は本文の各章にあります。ここはコピー用です。
末尾に「ここから〜」の行があるものは、その下に自分の内容を貼ってから送ってください。

161.情報を3区分に分類する

PROMPT
私が仕事で扱う情報を、AIに入れる観点で3つに分類してください。
分類はあなたが行ってください。
区分は「そのまま入れてよい」「固有名詞や数字を置き換えれば入れてよい」「何があっても入れない」の3つです。
判断に迷うものは「迷う」として分け、何が確認できれば判断できるかを添えてください。
基準は「誰かを特定できるか」「認証・番号・守秘義務に関わるか」です。
ここから私の情報です。
仕事の内容:
普段扱っている情報:
AIに入れるのを避けている情報:

172.文章を置き換える

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次の文章を、AIに安心して相談できる形に置き換えてください。
ルールは3つです。
人名・社名・地名・特定できる数字は、役割に置き換える(例:常連のAさん、取引先のB社、数万円台)。
組み合わせて個人や会社が特定できる記述は、一段ぼかす。
相談の中身(状況、困りごと、判断したいこと)は削らない。
置き換えた後の文章と、置き換えた箇所の一覧を出してください。
ここから文章です。

183.置き換え用の下準備を一度だけ作る

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私の仕事でよく登場する相手を、AI相談用の置き換え表にしてください。
実名は書かないので、種類と数だけ伝えます。
出力は「役割名(例:常連のAさん)/元の種類(例:個人顧客)/説明の一言」の一覧にしてください。
よく登場する相手の種類と数:

194.探し方は3ステップで共通

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あなたのサービスで、私が入力した内容が学習やモデル改善に使われるかを確認したいです。
確認できる設定画面の場所と、項目の名前を教えてください。
無料プランと有料プランで扱いが違う場合は、その違いも教えてください。
最新の情報が分からない場合は、分からないと言った上で、公式のどこを見ればよいかを教えてください。

205.長い規程はいらない

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私の仕事向けに、顧客へAI利用を説明する短い文章を作ってください。
条件は4つです。
口頭で言える3〜4文の版と、書面に載せる一段落の版の2つを作る。
「入れていないもの」「置き換えていること」「設定を確認していること」の3点だけで構成する。
実際にやっていないことは書かない。
大げさな安全宣言(絶対に安全です、など)はしない。
ここから私の状況です。
仕事の内容:
3区分の結果:
設定確認の結果:

216.1枚になっていないと、線引きは消える

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ここまでに作った内容を、1枚の「AI利用の線引きメモ」にまとめてください。
構成は次の順にしてください。
1.何があっても入れないもの
2.置き換えれば入れていいもの(置き換え表つき)
3.そのまま入れていいもの
4.使っているAIと設定の確認結果(確認した日付を入れる)
5.顧客に聞かれたときの説明文
迷ったときに戻る場所として使うので、短く、見て分かる形にしてください。
ここから材料です。

227.今週の仕事を3区分判定する

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今週AIに手伝わせたい仕事があります。
この仕事で扱う情報を3区分(そのまま入れてよい/置き換えれば入れてよい/何があっても入れない)で判定し、置き換えが必要な部分は置き換え例も出してください。
秘密保持や守秘義務に関わる可能性がある場合は、貼らずに済む代わりの聞き方を提案してください。
ここから仕事の内容です。
やりたいこと:
扱う情報: